「あと◯円で送料無料」。ECサイトのカート画面で、この一文を見て何かを買い足した経験はないでしょうか。
送料無料や「◯円以上で割引」といった条件は、EC事業者にとって客単価を押し上げる定番の施策です。一方で消費者は、その条件を満たすために「本来買う予定のなかった商品」を追加購入しています。
当社(株式会社スポルアップ)は、この「まとめ買い行動」の実態と、購入後の満足度を捉えるため、ECアクティブユーザー300名を対象とした本調査を実施しました。前々回の「自分へのご褒美EC」が“欲しくて買う”消費を扱ったのに対し、今回は“条件のために買う”消費がテーマです。
そこで見えてきたのは、2人に1人が追加購入を経験し、そのうち6割以上が「買わなくてもよかった」と感じているという構造でした。本記事では、当社調査データと自由記述の“生の声”をもとに、まとめ買いのリアルと、EC事業者が取るべき方向性を整理します。
2人に1人が、条件のために「買う予定のなかった商品」を追加購入
「送料無料や◯円以上で割引などの条件を満たすためだけに、本来買う予定のなかった商品を追加で購入した経験」を尋ねたところ、「よくある」14.0%、「たまにある」41.0%、合計55.0%でした。

性別では女性60.0%、男性50.0%と10ポイントの差がありました。年代別では30〜50代が55〜59%と高く、20代は41.9%(n=31)と最も低い結果でした。
追加購入の主流は「1,000円未満」——支払いを避けるための支払い

追加購入した商品の1回あたり金額は、「500円〜1,000円未満」が最多の44.0%。「500円未満」24.3%と合わせ、1,000円未満で68.3%、2,000円未満では82.7%に達しました。
送料はおおむね500円前後。それを回避するために数百円〜1,000円を買い足す。つまり、支払いを避けるための支払いが、まとめ買い行動の正体です。
買い足すのは「日用品・消耗品」「食品・飲料」

買い足した商品(複数回答)は、「日用品・消耗品(洗剤・ティッシュ・電池など)」44.9%、「食品・飲料(水・お茶・保存食など)」41.2%が上位。「お菓子・スイーツ」24.3%、「衣類の小物」23.9%、「化粧品・スキンケア・衛生用品」22.2%が続きます。「いつか使うもの」で帳尻を合わせるのが定石ですが、次項の通り、その多くが後悔につながっています。
追加購入した人の62.6%が「買わなくてもよかった」

本調査で最も示唆的だったのが、この結果です。追加購入した商品について「後から『買わなくてもよかった』と感じたことがあるか」を尋ねると、「よくある」11.9%、「たまにある」50.6%、後悔経験は合計62.6%にのぼりました。
| 追加購入の頻度 | n | 後悔経験 |
|---|---|---|
| よくある | 42 | 88.1% |
| たまにある | 123 | 65.0% |
| ほとんどない | 78 | 44.9% |
頻繁に追加購入する人ほど、後悔している。「よくある」層では約9割です。条件のための買い足しは、繰り返すほど「買わなくてもよかったもの」が家に積み上がる行動だと言えます。
「欲しくて買う」と「条件のために買う」で、後悔の表れ方が対照的

当社が2026年6月に実施した「自分へのご褒美EC」調査では、ご褒美として購入した後の満足度で「後悔した」人はわずか1.0%でした。一方、本調査では「条件のために追加購入」した人の62.6%が「買わなくてもよかった」と感じた経験をもっています。設問形式は異なるものの、同じEC上の支出でも、「自分が欲しくて買う」消費では後悔がほとんど表れず、「条件のために買う」消費では6割以上が「買わなくてもよかった」と感じた経験をもつ。後悔の表れ方を分けるのは金額ではなく、「なぜ買ったか」だと考えられます。
※両調査は設問形式が異なります。「自分へのご褒美EC」(n=411)は購入後の満足度5段階における「やや後悔・後悔」の合計、本調査(n=243)は「買わなくてもよかったと感じた経験」の有無です。単純比較はできません。
4人に3人が条件を「能動的に攻略」。でも3割は別サイトへ

送料条件への普段の対処は、「条件を満たせる“ちょうどいい商品”を探す」54.7%、「条件金額までまとめ買いする」43.6%が上位。いずれかを行う人は75.7%で、4人に3人が条件を能動的に攻略しています。
一方で見逃せないのが「別サイト・別店舗で買う」28.8%です。送料条件は購買の後押しであると同時に、約3割にとっては離脱の引き金にもなっています。
自由記述に見る「失敗」と「工夫」

自由記述(有効105件)では、失敗談が61%、工夫が33%でした。
失敗談
本調査 自由記述より(一部)
「せっかく買ったのに結局使うことがなかった」
「飲料をまとめ買いでお得だと思ったら消費期限が短くて消費が大変だった」
「まとめ買いした直後にセールをしていた」
「洗剤を買ったら置き場の確保に困った」
工夫
本調査 自由記述より(一部)
「幾つ家にあっても邪魔にならず手頃な綿棒や絆創膏を買い足す」
「買い足し候補を複数持っておき、不足金額に合わせて品物や個数を調整する」
「家族の分もまとめる」
「無理して買わない。違うサイトを見る」
失敗と工夫を分けるのは、買い足すものが「どうせ使う消耗品」か「条件のために選んだ不要品」か——この一点に集約されます。工夫している人は失敗しにくく、後悔62.6%の中身は後者だと考えられます。
本調査が示す「まとめ買いの3つの構造」
① 広く浸透——2人に1人、主流は1,000円未満
条件のための追加購入は特別な行動ではなく、日常的な“帳尻合わせ”として定着しています。
② 後悔を伴う——62.6%、頻繁な人は約9割
「いつか使う」で買い足したものの多くが、結局使われずに後悔につながっています。頻度と後悔率は比例します。
③ 動機で後悔の表れ方が対照的——ご褒美1.0% vs 条件のため62.6%
後悔の表れ方を左右するのは金額ではなく購入動機です(※両調査は設問形式が異なるため単純比較はできません)。「欲しくて買う」と「条件のために買う」では、同じECでも体験の質が異なる傾向がうかがえます。
EC事業者にとっての実務示唆
送料無料ラインは客単価を押し上げる有効な施策です。しかし、その裏で「買わなくてもよかった」という体験が積み上がることは、リピートや顧客満足の観点で見過ごせません。
① “ちょうどいい商品”を提示する
54.7%が条件を満たせる商品を「探して」います。カート画面で「あと◯円」に合う買い足し候補——特に消耗品・定番品・小口SKU——をレコメンドすることは、離脱防止と満足度の両方に効きます。
② 後悔されにくい買い足しへ誘導する
自由記述が示す成否の分かれ目は「どうせ使う消耗品か否か」です。「条件達成のためだけの商品」ではなく「日常的に使う定番品」を提案する設計が、後悔率を下げ、結果的にリピートを守ります。
③ 離脱3割への対応を検討する
「別サイトで買う」28.8%は、送料条件による離脱です。条件金額の水準や、少額差の場合の送料軽減など、条件設計そのものに離脱抑止の余地があります。
「あと◯円」の先にある体験を設計する
送料無料ラインは、消費者に「もう一品」を促す強力な仕組みです。しかし本調査が示したのは、その「もう一品」の6割以上が、後から「買わなくてもよかった」と振り返られているという事実でした。
EC事業者に問われているのは、「あと◯円」で客単価を上げることではなく、「あと◯円」の先で顧客に何を買ってもらうか——その体験まで設計することだと言えるのではないでしょうか。
当社(株式会社スポルアップ)では、自社リサーチによる購買動機別の行動分析、カート・レコメンド設計の支援、送料条件・価格設計の検討支援など、データに基づくEC支援を行っています。「後悔されない売り場づくり」について、ご相談を承っております。
詳細レポートのご案内
本記事で紹介したデータをすべて収録した、ダイジェスト版レポートを無料配布しています。
- Q1〜Q5の単純集計(全体・男女別)
- 年代別・追加購入頻度別のクロス分析グラフ
- 「自分へのご褒美EC」調査との後悔率比較
- 自由記述(失敗談・工夫)の分類と代表例
(メールアドレス入力で即時取得)
調査・分析のご相談
購買行動分析、カート設計・送料条件設計の検討、自主企画リサーチの設計など、当社リサーチ部門による調査・分析支援も承っております。
調査概要
- 調査名:「まとめ買い行動」に関する調査 2026
- 調査期間:2026年8月18日
- 調査対象:全国 ECアクティブユーザー 男女
- サンプル数:n=300(男性150 / 女性150)
- 調査方法:インターネット調査(セルフ型アンケートツール「Freeasy」使用)
- 調査主体:株式会社スポルアップ Research Division
- ※Q2〜Q5は、追加購入経験が「まったくない」と回答した57名を除くn=243がベース
補助参照データ:EC利用実態調査 2026(予備調査・n=6,000・2026年3月)/「自分へのご褒美EC」に関する調査 2026(n=500・2026年6月)
※本記事のグラフ・データはすべて当社が独自に実施した調査に基づくものです。
※引用の際は出典として「株式会社スポルアップ調べ」を明記してください。
